2003

グラン・ヴァン・デュ・シャトー・マルゴー

2003
過酷だった夏の天候条件を考慮すると、むしろ温かみがあって、熟した黒果実、さらにいうなら焦げたような果実のアロマがあらわれると予想もできたかもしれません。実際には、みずみずしくピュアな赤果実感のある仕上がりです。文字どおり、グラスから飛び出してきそうに生き生きとした果実。96年や2000年同様、新樽から来る香りはすでに完全に全体に溶け込んで、まるでワインの要素と混じって「消化」されてしまったかのようです。花系アロマがたっぷりと香り、ほのかなスパイスとともに、十分に複雑な香りのカクテルに嬉しそうに飛び込んでいる感じがわかります。


なんという素材感!もちろんすべてのワインに関して、凝縮性が極めて高かったことは知らされていました。そもそも低収量で、かつ夏の暑さによって果実は驚きのレベルにまで凝縮し、さらにアッサンブラージュでは上質なプレスワインを含めたこともあり、直近のヴィンテージと比較すると類稀なる濃度を含んでいます。この濃度がワインにたくましさや力強さのみならず、深みと余韻の長さをもたらし、さらにはまるで絹のようになめらかな織り目の詰んだタンニン・テクスチュアを生み出しています。
この年、ワインの酸と神秘を話題にすることが多々ありました。2003年ほど低い総酸量で収穫を行なった年もたしかに珍しいです。しかし、現時点での酸量は過去20年の平均値でしかありません。条件の面では過度な要素が多かった記憶のヴィンテージですが、蓋を開けてみると非常に上質なクラシカルなワインを生み出しています。将来有望と期待されたヴィンテージですが、しっかりデカンターするという条件を守れば、最初の数本は飲み始めてしまってもいいでしょう。(2019年)

Margaux

気象条件

非常に早生の2003年は、なにより夏の並外れた暑さが印象に残る。極端と呼ぶこともあるこうした気候条件は、多くの疑問や往々にして不安を引き起こした。しかし最も偉大なテロワールは、ブドウの実に完璧なバランスの成熟を確実にしながら、見事に窮地を巧みに切り抜けることを心得ていた。


ブドウの収穫は1893年以来最も早い時期の収穫の年だった1989年のように、9月10日に始まった。